ポロシャツという名称は、馬に乗ってボールを打ち合う球技の「ポロ」に由来します。
英語では「polo shirt」と表記され、もともとはポロ競技の選手が着用するシャツを意味していました。
現在では、襟があり、胸元に短いボタン付きの前立てを備えたニット製シャツの総称として広く使われています。
半袖が一般的ですが、長袖のポロシャツもあります。
「ポロ」という競技名の語源
「球」を意味する言葉が由来
英語の「polo」は、バルティ語で「球」や「ボール」を意味する「polo」に由来するとされています。
この言葉は、チベット語の「pulu」とも関連があると考えられています。
つまり、ポロという競技名を語源までさかのぼると、競技で使用するボールそのものを表す言葉に行き着きます。
言葉の変化を簡単に整理すると、次のようになります。
「球」を意味する言葉
↓
馬上で球を打ち合う競技の名称「polo」
↓
ポロ選手が着るシャツ「polo shirt」
↓
日本語の「ポロシャツ」
英語で「polo」が使われ始めた時期
「polo」という言葉が英語圏で使われるようになったのは、19世紀です。
辞書によって初出年の記録には違いがあります。
メリアム・ウェブスターでは1841年、Online Etymology Dictionaryでは現在の競技名として1872年ごろの用例が示されています。
年代に差があるのは、どの文献や用例を最初の記録とみなすかが辞書によって異なるためです。
いずれにしても、19世紀にインド周辺からイギリスへポロ競技が伝わる過程で、「polo」という名称が英語圏に定着したと考えられます。
ポロシャツはポロ競技から生まれたのか
名前の由来はポロ競技
ポロシャツという名前が、ポロ競技に由来することは確かです。
「polo shirt」という言葉は、少なくとも19世紀末には使用されていました。
メリアム・ウェブスターでは1887年、Online Etymology Dictionaryでは1892年ごろの用例が確認されています。
ただし、当時のポロシャツは、現在一般的な半袖のニットシャツとまったく同じ形ではありませんでした。
当初は、ポロ選手が競技中に着用する長袖の布帛シャツなどを広く「polo shirt」と呼んでいたと考えられます。
現在のデザインは複数の流れから生まれた
現在のポロシャツは、ポロ競技用のシャツだけを直接改良して完成したものではありません。
ポロ選手が着用していた襟付きシャツや、テニスウェアとして開発された半袖ニットシャツなど、複数のスポーツウェアの要素が重なって現在の形が定着しました。
そのため、ポロシャツの歴史を説明する際は、次の2点を分けて考える必要があります。
名称の由来はポロ競技です。
一方、現在一般的な半袖・襟付き・ニット製という形を確立し、広く普及させた人物として知られているのが、テニス選手のルネ・ラコステです。
初期のポロ競技用シャツ
当初は長袖のシャツが中心だった
19世紀末から20世紀初頭のポロ選手は、現在のような半袖の鹿の子編みシャツだけを着ていたわけではありません。
当時は、長袖の布帛シャツや厚手のコットンシャツなどが着用されていました。
ポロは馬に乗って激しく動く競技であるため、風によって襟がばたついたり、襟先が顔に当たったりすることがありました。
そこで選手たちは、競技中に襟が動かないよう、襟先をシャツ本体に固定していたとされています。
ボタンダウンシャツの誕生につながった
このポロ選手の工夫に注目したのが、ブルックス・ブラザーズ創業者の孫であるジョン・E・ブルックスです。
1896年、ジョン・E・ブルックスはイギリスでポロ競技を観戦し、選手たちが襟先を固定していることに着目しました。
その発想をもとに、ブルックス・ブラザーズは1900年ごろ、襟先をボタンで留めるボタンダウンカラーのシャツを商品化しました。
このシャツは、現在ブルックス・ブラザーズが「Original Polo Button-Down」と呼ぶ製品の原型とされています。
ボタンダウンシャツとポロシャツの関係
当時の「ポロシャツ」は現在と形が異なった
現在の日本でポロシャツといえば、胸元だけが開いた半袖のニットシャツを思い浮かべるのが一般的です。
しかし、19世紀末から20世紀初頭に「ポロシャツ」と呼ばれていた衣服には、前開きの布帛シャツも含まれていました。
ブルックス・ブラザーズが商品化したシャツも、現在の一般的なポロシャツではなく、オックスフォード生地などを使用したボタンダウンシャツに近いものでした。
「ポロカラー」という呼び方もある
アメリカの服飾用語やブルックス・ブラザーズの歴史では、ボタンダウンカラーを「ポロカラー」と呼ぶことがあります。
これは、襟先を固定する構造がポロ競技の選手の工夫から生まれたためです。
ただし、「polo collar」という言葉は地域や文脈によって意味が異なる場合があります。
そのため、必ずしもすべての国でボタンダウンカラーだけを意味するわけではありません。
現代的なポロシャツを広めたルネ・ラコステ
テニスウェアとして改良された
現在のポロシャツに近い半袖のニットシャツを広く普及させた人物が、フランスのテニス選手ルネ・ラコステです。
当時の男子テニスでは、長袖の布帛シャツやフランネルパンツなど、現在と比べて動きにくく、かしこまった服装が用いられていました。
ルネ・ラコステは、より動きやすく快適にプレーするため、柔らかく通気性に優れたコットンの鹿の子編みを使用した半袖シャツを採用しました。
このシャツには、現在のポロシャツにつながる次のような特徴がありました。
半袖であること。
柔らかい襟が付いていること。
胸元に短いボタン付きの前立てがあること。
頭からかぶって着るプルオーバー型であること。
通気性の高い鹿の子編みが使われていること。
1933年に本格的に商品化
1933年、ルネ・ラコステはニット製造業者のアンドレ・ジリエとともに、ラ・シュミーズ・ラコステを設立しました。
同社は、胸にワニのマークを刺繍した半袖のスポーツシャツを本格的に製造・販売しました。
このシャツが、現在広く知られているポロシャツの代表的な形を確立するうえで、大きな役割を果たしたとされています。
ただし、ラコステが「ポロシャツ」という言葉や衣服そのものをゼロから発明したわけではありません。
ポロ競技用のシャツや「polo shirt」という名称は、ラコステが商品化する以前から存在していました。
正確には、ラコステは現在のポロシャツに近い半袖・襟付き・鹿の子編みのデザインを確立し、広く普及させた人物と表現するのが適切です。
テニスシャツとポロシャツの関係
「polo shirt」という名称はラコステ以前から存在した
ポロシャツの歴史を説明する際に注意したいのが、名称と現在のデザインが生まれた時期の違いです。
「polo shirt」という名称は19世紀末から使われていました。
一方、ラコステが広めた半袖のニットシャツは、1920年代から1930年代にかけてテニスウェアとして発展したものです。
そのため、「テニスシャツがポロ競技で使われた結果、ポロシャツと呼ばれるようになった」という説明は正確ではありません。
ポロシャツという名称が先に存在し、その後、ラコステ型の半袖ニットシャツがポロシャツの代表的な形として定着したと考える方が適切です。
用途によって名称が変わる
現在のポロシャツに近い襟付きのスポーツシャツは、英語圏で次のように呼ばれることがあります。
「Polo shirt」は、最も一般的な名称の一つです。
「Tennis shirt」は、テニスウェアとして発展した歴史を反映した呼び方です。
「Golf shirt」は、ゴルフウェアとして使用される場合の呼び方です。
これらの名称は、似た形の襟付きスポーツシャツを指して重なることがあります。
ただし、競技専用の機能や素材によって、意味が少し異なる場合もあります。
ラルフ・ローレンが果たした役割
ポロシャツの発明者ではない
胸にポロプレーヤーのロゴが付いていることから、ポロシャツはラルフ・ローレンが発明したと思われることがあります。
しかし、ラルフ・ローレンがポロシャツを発明したわけではありません。
ポロ競技用のシャツやラコステ型の半袖ニットシャツは、ラルフ・ローレンが商品を発表する以前から存在していました。
ファッションアイテムとしてさらに普及させた
ラルフ・ローレンは1972年、胸にポロプレーヤーのロゴを刺繍したポロシャツを発表しました。
豊富な色展開と、アメリカの上流階級やアイビースタイルを思わせるブランドイメージを組み合わせたことで、ポロシャツはスポーツウェアだけでなく、日常的なファッションアイテムとしてさらに普及しました。
ラルフ・ローレンはポロシャツの発明者ではなく、アメリカン・トラディショナルやプレッピースタイルを象徴する衣服として、その知名度を高めたブランドといえます。
ラコステとラルフ・ローレンの違い
ラコステの役割
ラコステは、テニス選手が快適に動けるように、軽量で通気性の高い半袖ニットシャツを採用しました。
現在のポロシャツを代表する基本的なデザインを確立し、商品として広く普及させた点が大きな功績です。
ラルフ・ローレンの役割
ラルフ・ローレンは、すでに存在していたポロシャツを、ファッション性の高い日常着としてさらに普及させました。
ポロプレーヤーのロゴや豊富な色展開によって、ポロシャツをアメリカンスタイルの象徴的なアイテムへと発展させました。
日本語の「ポロシャツ」の意味
英語から生まれた外来語
日本語の「ポロシャツ」は、英語の「polo shirt」をカタカナ表記した外来語です。
日本では一般的に、襟があり、胸元に2個から3個程度のボタンが付いた、プルオーバー型のニットシャツを指します。
英語の「shirt」は前開きだけではない
日本語で「シャツ」というと、ワイシャツのような前開きの衣服を連想することがあります。
一方、英語の「shirt」は、前開きのドレスシャツだけでなく、Tシャツやポロシャツのように頭からかぶって着る上衣にも使われます。
そのため、「polo shirt」も、一般的には胸元だけが開いたプルオーバー型の衣服を指します。
ポロシャツの歴史を年代順に紹介
19世紀
インド周辺からイギリスへポロ競技が伝わり、「polo」という名称が英語圏で使用されるようになりました。
ポロ選手は長袖の襟付きシャツなどを着用し、競技中に襟がばたつかないよう、襟先をシャツ本体に固定していました。
1880年代から1890年代
「polo shirt」という英語表現が使われるようになりました。
当時は、現在の半袖ニットシャツに限定されず、ポロ選手が着用するシャツ全般を指していたと考えられます。
1896年から1900年ごろ
ジョン・E・ブルックスがイギリスのポロ選手の襟から着想を得ました。
その後、ブルックス・ブラザーズがボタンダウンカラーのシャツを商品化しました。
1920年代から1933年
ルネ・ラコステが、テニスのプレーに適した半袖の鹿の子編みシャツを着用するようになりました。
1933年にはラコステ社が設立され、現在のポロシャツに近いスポーツシャツが本格的に商品化されました。
1972年
ラルフ・ローレンが、ポロプレーヤーのロゴを付けた豊富な色展開のポロシャツを発表しました。
これにより、ポロシャツはアメリカンスタイルを象徴するファッションアイテムとして、さらに広く普及しました。
ポロシャツの語源に関するよくある疑問
ポロシャツはポロ競技専用の服だったのか
ポロシャツという名称は、もともとポロ選手が着用するシャツを意味していました。
ただし、現在のポロシャツはポロ競技だけに使用される服ではありません。
テニス、ゴルフ、制服、ビジネスカジュアル、日常着など、幅広い場面で着用されています。
ラコステが世界で最初にポロシャツを作ったのか
ラコステがポロシャツという名称や衣服そのものを最初に作ったわけではありません。
「polo shirt」という言葉は、ラコステが商品化する以前から存在していました。
ラコステの功績は、現在のポロシャツを代表する半袖・襟付き・鹿の子編みのデザインを確立し、広く普及させたことです。
ポロシャツはラルフ・ローレンの商品名なのか
ポロシャツは一般的な衣服の名称であり、ラルフ・ローレンだけの商品名ではありません。
ラルフ・ローレンには「Polo Ralph Lauren」というブランドがありますが、「polo shirt」という名称は同ブランドが誕生する以前から使用されています。
ポロシャツとボタンダウンシャツは同じなのか
現在では、ポロシャツとボタンダウンシャツは別の衣服として扱われます。
ポロシャツは、鹿の子編みなどのニット生地を使用し、胸元だけに短いボタン開きがあるプルオーバー型が一般的です。
一方、ボタンダウンシャツは、オックスフォード生地などの布帛を使用した前開きのシャツで、襟先を小さなボタンで固定します。
ただし、どちらもポロ競技の服装史と深い関係があります。
まとめ
ポロシャツという名前は、馬に乗ってボールを打ち合うポロ競技に由来します。
さらに「polo」という言葉は、バルティ語で「球」を意味する語に由来するとされています。
ポロ競技用のシャツや「polo shirt」という名称は、19世紀末にはすでに存在していました。
その後、ルネ・ラコステが、現在のポロシャツを代表する半袖・襟付き・鹿の子編みのスポーツシャツを確立し、広く普及させました。
さらにラルフ・ローレンなどのブランドによって、ポロシャツはスポーツウェアから日常的なファッションアイテムへと発展しました。
ポロシャツの歴史を簡潔にまとめると、名称はポロ競技に由来し、現在の代表的な形はテニスウェアの改良を通じて確立された衣服だといえます。
以上、ポロシャツという名前の語源や由来についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

