デッキシューズとモカシンは、どちらも甲部分にU字形の縫い目が入ったデザインが多く、見た目がよく似ています。
しかし、両者は同じ基準で分類されている靴ではありません。
デッキシューズは、もともと船の甲板で履くために作られた、用途を基準とする靴です。
一方、モカシンは、もともと革で足を包み込むように作られた靴を指し、現在では構造や製法、縫製デザインを表す言葉としても使われています。
そのため、デッキシューズとモカシンは完全に別々のカテゴリーではありません。
モカシン構造を採用したデッキシューズも存在します。
両者の違いを理解するためには、見た目だけでなく、用途、構造、ソール、靴ひもの仕様などを確認することが大切です。
デッキシューズとは
船の甲板で履くために生まれた靴
デッキシューズは、ヨットやボートなどの甲板上で履くことを目的に作られた靴です。
英語では「boat shoes」や「deck shoes」と呼ばれます。
船の甲板は水に濡れると滑りやすいため、デッキシューズには歩行時のグリップ力を高める工夫が施されています。
現在では、実際の船上で使用する靴だけでなく、デッキシューズの形やディテールを取り入れた街履き用の商品も広く販売されています。
そのため、商品名にデッキシューズと書かれていても、必ずしも本格的なマリンスポーツや船上作業に対応しているとは限りません。
水辺で使用する場合は、滑りにくさや耐水性、速乾性などを商品ごとに確認する必要があります。
溝の入ったラバーソールが代表的
デッキシューズの大きな特徴は、滑りにくさを考慮したラバー製のアウトソールです。
靴底には、細かな波形や直線状の切れ込みが入っていることがあります。
このような細かな切れ込みは、一般に「サイピング」と呼ばれ、水に濡れた場所でグリップ力を得やすくするためのものです。
ただし、溝が付いているだけで、本格的な船上使用に適しているとは限りません。
ファッション用のデッキシューズでは、見た目を再現する目的で溝が設けられている場合もあります。
ノンマーキングソールが使われることが多い
伝統的なデッキシューズには、床面に黒い擦れ跡を残しにくいノンマーキングラバーが使用されることがあります。
船の甲板を汚したり傷つけたりしにくくするための仕様です。
白や生成りなどの明るい色のソールがよく知られていますが、デッキシューズのソールが必ず白いわけではありません。
街履きを意識したモデルでは、黒、茶色、ネイビーなどのソールも使われています。
ノンマーキング仕様も、すべてのデッキシューズに備わっているわけではありません。
履き口の周囲をひもが通ることがある
伝統的なデッキシューズでは、革ひもがかかとから履き口の周囲を通り、甲部分のひもにつながっているデザインがよく見られます。
この構造は、一般に360度レーシングなどと呼ばれます。
ひもを調整することで、履き口周辺を足にフィットさせやすくする役割があります。
ただし、現代のファッション用モデルでは、周囲のひもが装飾的な作りになっていることもあります。
また、すべてのデッキシューズに360度レーシングが採用されているわけではありません。
モカシンとは
もともとは柔らかな革で作られた靴
モカシンは、もともと北米の先住民が履いていた柔らかな革靴に由来する名称です。
伝統的なモカシンでは、革を足裏から側面へ立ち上げるように使い、甲部分に別の革を縫い合わせます。
一般的な革靴のように、平らな底の上にアッパーを載せるというよりも、革で足を包み込むような構造が特徴です。
この構造によって、柔軟で足になじみやすい履き心地になりやすい傾向があります。
ただし、現在モカシンと呼ばれている靴が、すべて伝統的な構造で作られているとは限りません。
現在では構造やデザインを表す場合もある
現代の靴では、伝統的なモカシン構造を採用していなくても、甲にモカシン風の縫い目がある商品をモカシンと呼ぶことがあります。
そのため、モカシンという言葉は、特定の靴そのものを指すだけでなく、構造、製法、縫製方法、デザインなどを表す言葉としても使われています。
「モカシンは靴の形ではなく製法だけを表す」と言い切るのは正確ではありません。
実際の商品では、靴のカテゴリー名として使われる場合と、構造や意匠の説明として使われる場合があります。
U字形の縫い目が特徴
モカシン系の靴には、つま先から甲の周辺にかけて、U字形や馬蹄形の縫い目が見られることがあります。
このような縫い目は、モカ縫いやモックステッチなどと呼ばれます。
靴の構造によっては、甲に配置されたエプロン状のパーツを囲む縫い目として、エプロンシームと説明されることもあります。
ただし、モカ縫い、モックステッチ、エプロンシームは、厳密には必ずしも同じ構造や縫い方を表す言葉ではありません。
メーカーや靴の構造によって用語の使い方が異なることがあります。
また、U字形の縫い目があるからといって、その靴が必ず伝統的なモカシン製法で作られているとは限りません。
一般的な靴の構造に、モカシン風の飾り縫いを加えている商品もあります。
モカシンにはさまざまな種類がある
モカシンは、特定の用途に限定された靴ではありません。
そのため、モカシン構造やモカシン風の縫製は、さまざまな靴に採用されています。
代表的な例としては、デッキシューズ、ドライビングシューズ、ワラビータイプの靴、モカシンブーツ、モカ縫いのローファーなどがあります。
柔らかな革底を使った伝統的なモカシンもあれば、ラバーソールやクレープソールを組み合わせた街履き用のモデルもあります。
デッキシューズとモカシンの大きな違い
デッキシューズは用途を基準とする名称
デッキシューズという名称は、船のデッキで履くという本来の用途に由来しています。
濡れた甲板でも滑りにくいソールや、足を安定させるためのレーシングなどが代表的な特徴です。
現在は街履き用としても定着していますが、名称の出発点は船上での使用にあります。
モカシンは靴の種類や構造を表す名称
モカシンという名称は、もともと特有の構造を持つ柔らかな革靴を指していました。
現在では、伝統的なモカシン構造だけでなく、モカシン風の縫い目やデザインを持つ靴にも広く使われています。
したがって、モカシンはデッキシューズのように用途だけで分類される名称ではありません。
両者は重なることがある
デッキシューズとモカシンは、必ずどちらか一方だけに分類されるわけではありません。
デッキシューズのなかには、モカシン構造を採用しているモデルがあります。
その場合、その靴は用途やデザイン上はデッキシューズであり、構造上はモカシンと説明できます。
そのため、「デッキシューズかモカシンか」という二者択一で考えると、正確に分類できないことがあります。
参考サイト
モカシンとは? デッキシューズ・スリッポンとの違いや大人っぽく履くコツをスタイリストが解説 | Oggi.jp
ソールの違い
デッキシューズは防滑性を意識したラバーソールが中心
デッキシューズでは、濡れた場所で滑りにくくすることを目的としたラバーソールが代表的です。
細かな切れ込みが入ったソールや、甲板を汚しにくいノンマーキング仕様がよく見られます。
ただし、すべてのデッキシューズが同じ性能を持つわけではありません。
街履き用の商品では、実際の船上で必要とされる防滑性能や耐水性を備えていない場合があります。
モカシンのソールは種類が幅広い
モカシンには、決まったソールの形式がありません。
伝統的な柔らかな革底のほか、一般的なラバーソール、天然ゴム系のクレープソール、ドライビングシューズに使われる突起付きソールなどがあります。
どのソールが使われるかは、靴の用途やデザインによって異なります。
そのため、ソールだけでモカシンかどうかを判断することは困難です。
靴ひもの違い
デッキシューズはひも付きが代表的
伝統的な革製デッキシューズでは、2アイレットのひも付きデザインがよく知られています。
さらに、履き口の周囲に革ひもを通した360度レーシングが採用されることもあります。
ただし、デッキシューズには1アイレットや3アイレットのモデルもあります。
スリッポン型やキャンバススニーカー型などもあるため、アイレットの数だけで判断することはできません。
モカシンはひも付きとひもなしの両方がある
モカシンには、ひも付きとひもなしの両方があります。
ワラビータイプのように甲部分をひもで締めるものもあれば、ローファーのように靴ひもを使わずに履くものもあります。
履き口に飾りひもが付いたタイプもあります。
そのため、靴ひもの有無は、デッキシューズとモカシンを区別する絶対的な条件ではありません。
素材の違い
デッキシューズにはさまざまな素材が使われる
デッキシューズのアッパーには、表革、ヌバック、スエード、キャンバス、合成繊維など、さまざまな素材が使われます。
水辺での使用を想定したモデルでは、耐水加工を施した革や、速乾性を考慮した素材が採用されることもあります。
ただし、デッキシューズという名称だけで、防水性や耐水性が保証されるわけではありません。
特に未処理のスエードやヌバックは、水染みが生じることがあります。
実際に水辺で履く場合は、素材の特性やメーカーの使用上の注意を確認しましょう。
モカシンは柔らかな革やスエードが多い
モカシンには、柔らかな表革、スエード、ヌバックなどがよく使われます。
足を包み込むような構造と相性がよく、柔軟な履き心地を作りやすいためです。
ただし、現代では厚手の革や合成皮革、繊維素材を使用した商品もあります。
素材だけでモカシンかどうかを判断することはできません。
履き心地の違い
デッキシューズは軽快な履き心地になりやすい
デッキシューズは、動きやすさを考慮して、比較的軽量で屈曲しやすい作りになっていることがあります。
履き口のひもを調整できるモデルでは、足を安定させやすいことも特徴です。
ただし、履き心地は革の厚さ、ソール、ライニング、インソールなどによって異なります。
すべてのデッキシューズが軽くて柔らかいとは限りません。
モカシンは足になじみやすい傾向がある
伝統的なモカシン構造の靴は、革で足を包み込むように作られているため、柔軟で足になじみやすい傾向があります。
一方で、厚底のソールや硬い革を使ったモカシン風シューズもあります。
実際の履き心地は、モカシンという名称だけでなく、素材や内部構造、ソールの硬さを確認して判断することが大切です。
デッキシューズとモカシンの見分け方
靴底の溝を確認する
靴底に細かな波形や直線状の切れ込みが多数入っている場合は、デッキシューズの特徴を備えている可能性があります。
白や生成りのノンマーキングラバーソールも、伝統的なデッキシューズによく見られる仕様です。
ただし、溝のあるラバーソールはほかの靴にも使われるため、靴底だけで断定することはできません。
履き口を囲むひもを確認する
かかとから履き口の側面を通り、甲の靴ひもにつながる革ひもは、デッキシューズの代表的なディテールです。
ただし、モカシンにも飾りひもが付いている場合があります。
靴ひもだけでなく、ソールや商品の用途とあわせて判断しましょう。
U字形の縫い目だけで判断しない
甲にU字形の縫い目がある靴は、モカシンまたはモカシン風のデザインである可能性があります。
しかし、デッキシューズにもモカ縫いが多く使われています。
そのため、U字形の縫い目があるだけでは、一般的なモカシンなのか、モカシン構造のデッキシューズなのかを判断できません。
商品名や説明を確認する
見た目だけで区別しにくい場合は、メーカーや販売店の商品説明を確認する方法が確実です。
「boat shoes」や「deck shoes」と記載されていれば、デッキシューズとして販売されている商品です。
「moccasin construction」と書かれている場合は、モカシン構造を採用していることを表します。
「moc toe」や「moc stitching」は、モカシン風のつま先や縫製を意味する場合があります。
一足の商品説明に「boat shoes」と「moccasin construction」の両方が記載されることもあります。
デッキシューズとローファーの違い
ローファーはひもを結ばずに履く靴
ローファーは、基本的に靴ひもを結ばずに履けるスリッポン型の靴です。
甲部分には、帯状のサドル、金属製のビット、房飾りなどが付くことがあります。
一方、伝統的なデッキシューズは、ひも付きのデザインが中心です。
ただし、スリッポン型のデッキシューズも存在するため、ひもの有無だけで厳密に分類できない場合があります。
モカシン構造のローファーもある
モカシンは構造や意匠を示す言葉としても使われるため、モカシン構造を採用したローファーも存在します。
その場合、その靴は形としてはローファーであり、構造としてはモカシンと説明できます。
一方、ひも付きのモカシンやモカシンブーツもあるため、モカシンとローファーは同じ意味ではありません。
デッキシューズが向いている人
春夏らしい軽快な服装を楽しみたい人
デッキシューズは、マリンテイストを感じさせる軽快なデザインが特徴です。
チノパン、デニム、ショートパンツ、ポロシャツ、シャツなどと合わせやすく、特に春夏のカジュアルスタイルに取り入れられています。
スニーカーよりも上品で、一般的な革靴よりもカジュアルな足元を作りたい場合に適しています。
ただし、デッキシューズは春夏専用の靴ではありません。
素材や色、コーディネートによっては秋にも履くことができます。
水辺で履ける靴を探している人
ヨットやボート、海辺などで使用する場合は、船上での使用を想定した本格的なデッキシューズが候補になります。
選ぶ際は、濡れた床でのグリップ力、ノンマーキング仕様、排水性、速乾性、耐水性などを確認しましょう。
ファッション用のデッキシューズは、水辺での使用に対応していない場合があります。
商品名だけでなく、メーカーが示す機能や使用目的を確認することが重要です。
モカシンが向いている人
柔らかな素材感を重視する人
柔らかな革やスエードの質感を楽しみたい場合は、モカシンが選択肢になります。
足を包み込むような構造のモデルは、革が足になじみやすく、リラックスした履き心地を得やすい傾向があります。
ただし、商品によって革の硬さやソールの厚さが異なるため、試着して確認することが大切です。
幅広い季節や服装に合わせたい人
モカシンには、軽量な春夏向けのモデルから、スエードや厚手のソールを使った秋冬向けのモデルまであります。
デニム、チノパン、コーデュロイパンツ、ワイドパンツなど、幅広いボトムスと合わせられます。
適した季節は、モカシンという名称ではなく、素材やソール、ライニングの有無によって判断しましょう。
デッキシューズとモカシンの違いを比較
分類基準の違い
デッキシューズは、船の甲板で履くという用途を基準にした名称です。
モカシンは、もともと特有の構造を持つ革靴の名称であり、現在では構造、製法、縫製デザインを表す言葉としても使われています。
ソールの違い
デッキシューズは、細かな溝を施したラバーソールが代表的です。
モカシンには、革底、ラバーソール、クレープソール、突起付きソールなど、さまざまな種類があります。
靴ひもの違い
デッキシューズは、ひも付きや360度レーシングのモデルが代表的です。
モカシンには、ひも付き、ひもなし、飾りひも付きなど、さまざまなデザインがあります。
用途の違い
デッキシューズは、水辺や春夏のカジュアルスタイルに向いています。
モカシンは、モデルによって街履き、運転、室内履き、秋冬のカジュアルスタイルなど、用途が異なります。
両者の関係
デッキシューズとモカシンは、完全に分けられるものではありません。
モカシン構造を採用したデッキシューズもあります。
そのため、見た目だけで無理に分類するのではなく、用途と構造を分けて考えることが重要です。
デッキシューズとモカシンの違いに関するまとめ
デッキシューズとモカシンの最も大きな違いは、名称の基準にあります。
デッキシューズは、もともと船の甲板で滑りにくく履くために作られた靴です。
細かな溝の入ったラバーソールや、履き口の周囲を通るひもなどが代表的な特徴です。
一方、モカシンは、もともと革で足を包み込む構造を持つ柔らかな靴を指します。
現在では、伝統的な構造だけでなく、甲にモカシン風のU字形ステッチを施した靴にも広く使われる名称です。
デッキシューズのなかには、モカシン構造を採用したモデルがあります。
そのため、デッキシューズとモカシンは、必ずしも別々の靴として対立するものではありません。
見分ける際は、U字形の縫い目だけを見るのではなく、ソールの溝、ノンマーキング仕様、履き口のひも、商品名、メーカーが示す用途などを総合的に確認しましょう。
以上、デッキシューズとモカシンの違いについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

