セーターの縫い目をきれいに始末すると、ほつれや穴あきを防ぎ、長く着用しやすくなります。
ただし、市販のセーター、ニット生地を縫って作るセーター、手編みのセーターでは、適した始末方法が異なります。
誤った方法で処理すると、縫い目が伸びなくなったり、編み地が引きつれたりするため、セーターの構造や素材に合った方法を選ぶことが大切です。
セーターの縫い目の始末とは
セーターの縫い目の始末とは、身頃や袖などをつないでいる部分を整え、糸のほつれや縫い目の開きを防ぐ作業です。
一般的な織物と異なり、セーターの編み地には伸縮性があります。
そのため、縫い目を強く締めたり、伸びにくい縫い方で固定したりすると、着脱時に縫い糸が切れる可能性があります。
縫い目を始末するときは、次の3点を意識しましょう。
- 編み地の伸縮性を妨げない
- 本体の編み糸を傷つけない
- 縫い目や糸始末を厚くしすぎない
最初にセーターの種類を確認する
セーターの縫い目を補修する前に、市販品なのか、ニット生地から縫製したものなのか、手編みなのかを確認します。
同じように見える縫い目でも、製造方法によって構造が異なるためです。
市販のセーター
市販のセーターには、ニット生地を裁断して縫製したものと、身頃や袖を形に合わせて編んだ成型編みのものがあります。
裁断したニット生地から作られた製品では、オーバーロック縫いや環縫いなどがよく使われます。
一方、成型編みのセーターでは、編み目同士をつなぐリンキングという方法が使われることもあります。
縫い方によって補修方法が異なるため、飛び出した糸をすぐに切ったり、強く引っ張ったりしないようにしましょう。
ニット生地から縫ったセーター
家庭用ミシンやロックミシンでニット生地を縫って作ったセーターでは、縫い代の端を整える必要があります。
ニット生地は織物ほど端がほつれないものもありますが、生地の種類によっては裁断面から編み目がほどけたり、端が丸まったりします。
縫い代を安定させるためにも、生地に合った端処理を行うことが大切です。
手編みのセーター
手編みのセーターでは、脇や袖下を「すくいとじ」、肩などを「引き抜きはぎ」や「メリヤスはぎ」でつなぐ方法があります。
また、編み始めや編み終わり、毛糸を交換した場所には糸端が残ります。
縫い合わせだけでなく、これらの糸端を編み地の裏側へなじませる作業も必要です。
市販のセーターの縫い目を始末する方法
糸が少し飛び出している場合
縫い目から糸が飛び出していても、すぐには切らないでください。
縫製糸が環縫いやオーバーロック縫いの一部だった場合、切ったところから縫い目が連続してほどける可能性があります。
まずはセーターを裏返し、飛び出した糸がどこにつながっているか確認します。
糸を少し動かしたときに周囲の縫い目が緩む場合は、切らずに固定する必要があります。
縫い目が開いていなければ、糸を針に通し、裏側の縫い糸へ数回くぐらせます。
その後、糸端を縫い代の中へ通して目立たなくします。
糸を強く引くと編み地が縮むため、縫い目が自然な状態を保つ程度に調整しましょう。
縫製糸が切れて縫い目が開いている場合
本体の編み地に穴がなく、縫製糸だけが切れている場合は、手縫いで補修できることがあります。
用意するものは、縫い針、セーターに近い色の糸、糸切りばさみです。
糸は色だけでなく、太さや強度も確認して選びましょう。
補修は次の手順で行います。
- セーターを裏返し、平らな場所へ置きます。
- 縫い目が開いている範囲と、その前後の緩みを確認します。
- 左右の縫い位置を合わせ、まち針やクリップで軽く固定します。
- 開いた部分の前後1〜2センチ程度を含めて縫います。
- 半返し縫いや細かなかがり縫いで、既存の縫い線に沿って補修します。
- 最後に糸を裏側の縫い目へ数回くぐらせ、糸端を隠します。
本返し縫いは丈夫ですが、細かく縫いすぎると縫い目が伸びにくくなります。
伸縮性のある部分では、糸を締めすぎず、必要以上に硬い縫い目を作らないようにしましょう。
補修後は縫い目を軽く伸ばし、糸が突っ張っていないか、生地が引きつれていないか確認します。
縫い方が分からない場合
環縫いやオーバーロック縫いは、糸端が外れると連続してほどけることがあります。
リンキングされた部分も、状態によっては家庭での補修が難しくなります。
糸を触るたびに縫い目がほどける場合や、広い範囲が開いている場合は、それ以上引っ張らないようにしましょう。
糸を切らず、そのままの状態でニット修理を扱う専門店へ相談するのが安全です。
参考サイト
Rep Knit(リプニット)|縫い目のほつれたニットの直し方 | KNIT MAGAZINE
編み糸が切れている場合の対処法
縫製糸のほつれとの違いを確認する
セーターの縫い目が開いているように見えても、縫製糸ではなく、本体を構成する編み糸が切れている場合があります。
縫製糸だけが切れている場合は、左右の編み地が離れていても、それぞれの編み目は保たれています。
一方、本体の編み糸が切れている場合は、編み目のループが外れ、小さな穴や縦方向の伝線が見られることがあります。
この状態で切れた糸を引っ張ったり切ったりすると、穴が広がる可能性があります。
外れた編み目を一時的に固定する
編み目が外れている場合は、安全ピンや目数リングなどをループへ通し、編み目がさらにほどけないように一時的に固定します。
ただし、安全ピンを無理に刺すと編み糸を割ったり傷つけたりすることがあります。
編み目のループ部分へ丁寧に通し、強く引っ張らないようにしてください。
編み目を拾い直すには、セーターの編み方に関する知識が必要です。
高価な製品や穴が広がっているものは、専門店に依頼するのがおすすめです。
ニット生地の縫い代を始末する方法
ロックミシンで処理する
ロックミシンは、ニット生地を縫い合わせながら裁断面をかがることができます。
伸縮性を保ちやすく、縫い代をすっきり仕上げられるのが特徴です。
伸びやすい生地を縫う場合は、差動送りを調整すると縫い目の波打ちを抑えられます。
適切な設定は生地の厚さや伸縮性によって異なるため、必ず余り布で試し縫いをしましょう。
家庭用ミシンで処理する
ロックミシンがない場合は、家庭用ミシンのジグザグ縫い、伸縮縫い、ニットステッチなどを利用できます。
ミシン針には、編み糸を傷つけにくいニット用針やボールポイント針を使用します。
糸はポリエステル製ミシン糸やニット向けの糸など、生地と縫い方に合ったものを選びましょう。
ジグザグ縫いで縫い代を処理する場合は、生地端から少し内側を縫ってから、余分な縫い代を切りそろえます。
最初に縫い代をぎりぎりまで切ると、生地が針板へ巻き込まれる場合があるため注意が必要です。
生地が波打つ場合は、縫い目を細かくしすぎていないか、押さえ圧が強すぎないかを確認します。
押さえ圧を調整できるミシンでは、余り布で試しながら適切な設定を探しましょう。
縫い代を倒して固定する
薄手のニット生地では、縫い代を片側へ倒し、表側からステッチを入れて固定する方法もあります。
ただし、この方法はカットソーに近い薄手の生地に向いています。
厚手のセーターや成型編みの製品に行うと、縫い目が硬くなったり、表側の見た目を損ねたりすることがあります。
使用する場合は、余り布や目立たない場所で仕上がりを確認しましょう。
手編みセーターの縫い目を始末する方法
脇や袖下はすくいとじでつなぐ
メリヤス編みの脇や袖下には、すくいとじがよく使われます。
表側から作業でき、正しく仕上げればつなぎ目が目立ちにくい方法です。
左右の編み地を表側にして並べ、端の目とその隣の目の間に見える渡り糸を、とじ針で左右交互にすくいます。
数センチ進むごとに、とじ糸を少しずつ引いて編み地を寄せます。
一度に強く引くと、縫い目が縮んだり編み地が引きつれたりします。
周囲の編み目と同じ大きさになるように調整しましょう。
肩は引き抜きはぎやメリヤスはぎでつなぐ
伏せ止めしていない肩の目同士をつなぐ場合は、引き抜きはぎやメリヤスはぎなどを使います。
引き抜きはぎは、かぎ針で左右の目を拾いながら引き抜き、編み地をつなぐ方法です。
比較的丈夫に仕上がるため、セーターの重さがかかる肩に使われます。
メリヤスはぎは、とじ針を使って、編み目が連続しているようにつなぐ方法です。
縫い目が目立ちにくい一方、糸の締め具合によっては肩が伸びたり縮んだりします。
使用する方法は、作品の設計や編み図に従って選びましょう。
ゴム編み部分は伸縮性を残す
袖口、裾、襟ぐりなどのゴム編み部分は、着用するときに大きく伸びます。
きつく縫い合わせたり、糸端を強く固定したりすると、その部分だけ伸びなくなることがあります。
ゴム編みの目の流れに沿って糸を通し、編み地を伸ばしたときに糸が突っ張らない程度のゆとりを残しましょう。
手編みセーターの糸端を始末する方法
とじ針で編み地の裏側へ通す
編み終わりや糸を交換した部分の糸端は、大きな玉結びだけで処理しないようにします。
結び目が表側に響いたり、肌に当たったりすることがあるためです。
糸端をとじ針へ通し、編み地の裏側で目の流れに沿ってなじませます。
必要に応じて方向を変えながら通すと、糸端が抜けにくくなります。
最後は編み地を軽く伸ばし、糸端が突っ張っていないことを確認してから切りましょう。
素材に合わせて糸端の長さを調整する
糸端を通す長さは、毛糸の太さ、素材、滑りやすさ、編み地の密度によって異なります。
ウールのように繊維が絡みやすい毛糸は、比較的糸端が抜けにくい傾向があります。
一方、コットン、麻、シルク、レーヨンなどの滑りやすい糸は、短い糸始末では抜ける可能性があります。
滑りやすい糸は長めに残し、編み目に沿って往復させたり、方向を変えて通したりしましょう。
同じ場所へ何度も重ねると厚くなるため、少しずつ位置をずらすのがポイントです。
太い毛糸は必要に応じて分ける
複数の撚りで作られている太い毛糸は、糸端を無理なく分けられる場合に限り、複数に分割して始末する方法があります。
それぞれを異なる方向へ通すことで、厚みを抑えやすくなります。
ただし、単糸、起毛糸、モヘア、ループヤーン、テープヤーンなどは、分割に適していないことがあります。
糸が切れそうな場合や構造が分からない場合は、無理に分けないでください。
セーターの縫い目を始末するときの注意点
飛び出した糸をすぐに切らない
縫い目から出ている糸が、単なる余分な糸とは限りません。
縫製糸や本体の編み糸だった場合、切ることで縫い目や編み目がほどける可能性があります。
まずは裏側を確認し、糸がどこにつながっているかを確かめましょう。
糸を強く引かない
補修部分を丈夫にしようとして糸を強く引くと、編み地が縮んだり、縫い目がつれたりします。
縫っている途中にもセーターを平らに置き、周囲と同じ長さになっているか確認しましょう。
仕上げに軽く伸ばし、必要な伸縮性が残っているかを確かめることも大切です。
接着剤だけで補修しない
ほつれ止め液や布用接着剤は、乾燥後に硬くなることがあります。
製品によっては変色したり、表側へ染み出したりする可能性もあります。
特にウール、カシミヤ、シルク、淡い色のセーターには、安易に使用しない方が安全です。
使用する場合は対象素材や洗濯への対応を確認し、目立たない場所で試しましょう。
アイロンは洗濯表示に従って使用する
補修した縫い目を整えるためにアイロンを使用するときは、必ず洗濯表示を確認します。
低温でも使用できない製品があるため、素材だけで判断しないようにしましょう。
アイロンが使用できる場合も、当て布をして強く押しつぶさないことが大切です。
立体的な編み柄や毛足の長いニットは、アイロンを押し当てると風合いが損なわれることがあります。
スチームを使う場合も、洗濯表示を確認し、適度に距離を取って形を整えましょう。
専門店へ相談した方がよいケース
小さな縫い目の開きであれば、自宅で補修できる場合があります。
しかし、次のような状態はニット修理を扱う専門店へ相談するのがおすすめです。
- カシミヤや高級ウールなどのデリケートな素材
- 本体の編み糸が切れている
- 編み目が縦方向へ連続してほどけている
- 縫い目が広範囲に開いている
- 襟ぐりや肩など、形に影響する部分が破損している
- 模様編みや多色編みの境目が壊れている
- リンキング部分が大きく外れている
- 補修跡をできるだけ目立たせたくない
専門店では、リンキング、編み目の再形成、かけつぎなど、状態に応じた方法で修理してもらえることがあります。
セーターの縫い目を長持ちさせるコツ
セーターを着脱するときは、襟ぐりや袖口だけを強く引っ張らないようにしましょう。
狭い部分へ力が集中すると、縫製糸や編み糸が傷みやすくなります。
洗濯できる製品は洗濯ネットに入れ、洗濯表示に従って手洗いや弱い水流のコースを選びます。
濡れたセーターは重くなるため、持ち上げるときに袖や襟だけをつかまないようにしてください。
乾燥させるときは形を整えて平干しすると、肩や縫い目への負担を抑えられます。
収納するときもハンガーに掛けたままにせず、たたんで保管するのが基本です。
まとめ
セーターの縫い目を始末するときは、製品の構造を確認し、編み地の伸縮性を残しながら処理することが大切です。
市販のセーターから糸が飛び出していても、すぐに切ってはいけません。
縫製糸が切れているだけであれば手縫いで補修できる場合がありますが、本体の編み糸が切れている場合は、外れた編み目を先に固定する必要があります。
手編みのセーターでは、脇や袖下にはすくいとじ、肩には引き抜きはぎやメリヤスはぎなど、場所と設計に合った方法を選びます。
糸端は大きな玉結びだけで済ませず、編み地の裏側へなじませましょう。
高級素材や広範囲のほつれ、編み目そのものの破損がある場合は、無理に直さず、ニット修理を扱う専門店へ相談するのが安心です。
以上、セーターの縫い目の始末についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

