セーターが縮むのは、水分や熱、摩擦などの影響によって、繊維同士が絡んだり編み目が詰まったりするためです。
ただし、すべてのセーターが同じ仕組みで縮むわけではありません。
ウールでは繊維同士が絡み合う「フェルト収縮」が起こりやすく、綿では製造時に加わった張力が緩む「緩和収縮」が見られます。
アクリルやポリエステルなどの合成繊維も、高温によって変形する可能性があります。
縮む原因を正しく理解するためには、セーターの素材と洗濯方法を確認することが重要です。
ウールのセーターが縮む仕組み
ウールの表面にはスケールがある
ウールの繊維表面には、スケールと呼ばれるうろこ状の組織があります。
人間の髪の毛にあるキューティクルに似た構造です。
スケールがあることで、繊維が動く方向によって摩擦抵抗に差が生まれます。
ウールが水分を含んだ状態で揉まれたり擦られたりすると、繊維が少しずつ移動し、互いに絡み合います。
絡んだ繊維は元の位置へ戻りにくいため、編み地が密になってセーター全体が縮んでしまうのです。
フェルト収縮が起こると生地が硬くなる
ウールの繊維が複雑に絡み合い、生地が密になる現象を「フェルト収縮」といいます。
フェルト収縮が進むと、セーターの着丈や身幅が短くなるだけではありません。
生地が厚く硬くなり、編み目が見えにくくなることもあります。
繊維同士が物理的に絡み合っているため、完全に元の状態へ戻すのは困難です。
特に、洗濯後にセーターが小さくなり、表面が詰まって硬くなっている場合は、フェルト収縮が起きている可能性があります。
セーターが縮む主な原因
洗濯中に強い摩擦が加わった
ウールのセーターを洗濯機の標準コースで洗うと、強い水流や回転によって衣類が繰り返し動かされます。
洗濯槽やほかの衣類と擦れることで、ウールの繊維が絡み、フェルト収縮が進むことがあります。
手洗いの場合も、強く揉んだり擦ったりすれば縮む可能性があります。
家庭で洗えるセーターは、衣類を裏返して洗濯ネットへ入れ、洗濯表示に対応した弱いコースで洗いましょう。
手洗いする場合は、洗浄液の中でやさしく沈めたり浮かせたりする押し洗いが基本です。
洗濯表示より高い温度で洗った
高温のお湯を使うと、繊維が水分を含んで膨らみ、洗濯中の摩擦や機械的な力による影響を受けやすくなります。
特にウールは、高温、湿気、摩擦などの条件が重なることで、フェルト収縮が進みやすくなります。
ただし、お湯に入れただけで必ず大幅に縮むわけではありません。
ウールが縮む主な原因は温度差だけではなく、水分、熱、摩擦、洗剤、回転などが複合的に作用することです。
洗濯するときは、「30℃まで」「40℃まで」など、洗濯表示に記載された上限温度を守りましょう。
セーターに適さない洗剤を使った
ウールやカシミヤなどの動物繊維は、主にタンパク質からできています。
一般的な弱アルカリ性洗剤を使用すると、繊維の風合いや強度に影響を与えることがあります。
家庭で洗えるウール製品には、「毛・絹に使用できる」と表示された中性のおしゃれ着用洗剤を使用するのが基本です。
また、タンパク質分解酵素を含む洗剤は、動物繊維に適さない場合があります。
ただし、酵素入り洗剤がすべて使用できないわけではありません。
洗剤の液性だけで判断せず、製品に記載された用途や注意事項を確認しましょう。
乾燥機の熱と回転が加わった
回転式の衣類乾燥機では、温風だけでなく、回転や衣類同士の衝突による摩擦も加わります。
そのため、防縮加工されていないウールのセーターを乾燥機に入れると、フェルト収縮が一気に進む可能性があります。
綿やレーヨンも、高温乾燥によって寸法が小さくなることがあります。
アクリルやポリエステルなどの合成繊維も、高温にさらされると変形したり風合いが変わったりするため注意が必要です。
タンブル乾燥禁止の表示があるセーターは、乾燥機へ入れてはいけません。
乾燥機を使用できる場合も、洗濯表示に記載された上限温度を守りましょう。
洗濯後に形を整えず干した
水分を含んだセーターは重くなり、編み目が動きやすい状態です。
縮んだように丸まった状態で乾かすと、そのままの形で仕上がることがあります。
一方、ハンガーに掛けると、水の重みで肩や袖、着丈が伸びる可能性があります。
洗濯後は肩幅、身幅、着丈、袖丈をやさしく整え、洗濯表示に従って干しましょう。
平干しの表示がある場合は、平干しネットなどを使用します。
参考サイト
セーター、洗うとなぜ縮む?最大手クリーニング店に聞いた 家庭でできる処理とできない処理
素材によって異なるセーターの縮み方
ウール
ウールは、羊毛から作られる代表的な動物繊維です。
水分を含んだ状態で摩擦や機械的な力を受けると、フェルト収縮を起こしやすい特徴があります。
縮むと生地が密になり、厚く硬い感触へ変わることがあります。
ただし、防縮加工が施されたウォッシャブルウールなどは、一般的なウールよりフェルト収縮が起こりにくくなっています。
防縮加工された製品でも、必ず洗濯表示に従って扱いましょう。
カシミヤ
カシミヤもウールと同じ動物繊維であり、水分や摩擦の影響を受けやすい素材です。
非常に細く柔らかい繊維であるため、乱暴に洗うと縮みだけでなく、毛羽立ちや風合いの低下も起こります。
家庭洗濯禁止の表示がある場合は、自宅で水洗いしてはいけません。
大切なカシミヤ製品は、洗濯表示に対応できるクリーニング店へ相談すると安心です。
アンゴラやモヘヤ
アンゴラやモヘヤは毛足が長く、ふんわりとした風合いが特徴です。
洗濯中に揉んだり擦ったりすると、毛が絡んで生地が縮んだり、毛羽立ちや毛抜けが発生したりする可能性があります。
家庭で洗える場合は裏返して洗濯ネットへ入れ、摩擦を抑えて短時間で洗いましょう。
綿
綿のセーターでは、主に緩和収縮が起こります。
綿は糸や生地へ加工される過程で、引っ張る力やねじる力を受けています。
洗濯によって水分を含むと、製造時に生じた緊張が緩み、糸や編み目がより安定した状態へ戻ろうとします。
その結果、編み目が詰まり、着丈や身幅が短くなることがあります。
特にニット生地は糸がループ状に組み合わされているため、一般的な織物より寸法が変化しやすい傾向があります。
綿のセーターも、乾燥機の高温によって縮みやすくなるため注意が必要です。
レーヨン
一般的なビスコースレーヨンは、水を含むと強度が低下しやすく、縮みや型崩れが起こることがあります。
洗濯方法によっては、生地が伸びたり、表面が毛羽立ったりすることもあります。
ただし、レーヨン系繊維には複数の種類があり、すべてが同じ性質を持つわけではありません。
素材名だけで洗えると判断せず、洗濯表示を確認しましょう。
アクリルやポリエステル
アクリルやポリエステルは、一般的にウールや綿より縮みにくい合成繊維です。
ただし、熱に強いという意味ではありません。
高温の乾燥機やアイロンによって変形したり、風合いや表面の状態が変化したりする可能性があります。
また、ウールやレーヨンなどを組み合わせた混紡製品では、混ざっている素材の性質によって縮むことがあります。
洗っていないのに縮んだように感じる理由
着用中に伸びていた部分が戻った
セーターは着用している間に、肘、肩、身頃などが少しずつ伸びることがあります。
洗濯によって編み目が整うと、着用前の寸法に近づき、縮んだように感じる場合があります。
この場合は、繊維が傷んだフェルト収縮とは限りません。
製造時の張力が緩んだ
セーターの糸や編み地には、製造工程で加わった張力が残っていることがあります。
最初の洗濯でその張力が緩み、編み地が安定した状態へ戻ることで、購入時より少し小さくなる場合があります。
これは緩和収縮の一種で、綿ニットなどに見られます。
一部が伸びて全体のバランスが変わった
セーターは、縮みだけでなく伸びによってもシルエットが変わります。
例えば、身頃の幅は小さくなっている一方で、ハンガー干しによって着丈や袖丈が伸びることがあります。
「小さくなった」と感じたときは、着丈、身幅、肩幅、袖丈をそれぞれ確認しましょう。
セーターの縮みと型崩れの違い
縮みとは、繊維や編み目が詰まり、衣類の寸法そのものが小さくなる現象です。
一方の型崩れは、肩、襟、袖、身頃などの形が変わる現象を指します。
セーターでは、縮みと型崩れが同時に起こることがあります。
生地が厚く硬くなり、全体的に小さくなっている場合は、フェルト収縮の可能性があります。
生地の柔らかさは変わらず、一部だけが短くなったり伸びたりしている場合は、編み目の乱れや型崩れが考えられます。
セーターの縮みを防ぐ方法
洗濯表示を最優先にする
セーターを洗う前に、家庭洗濯、漂白、タンブル乾燥、自然乾燥、アイロン、クリーニングに関する表示を確認しましょう。
家庭洗濯禁止の表示がある場合は、自宅で水洗いできません。
手洗い表示がある場合は、洗濯機の標準コースを使わず、表示に従って手洗いします。
洗濯機に「手洗いコース」があっても、衣類の手洗い表示に対応できるとは限らないため、洗濯機の取扱説明書も確認しましょう。
摩擦を抑えてやさしく洗う
家庭で洗えるセーターは裏返してたたみ、サイズの合う洗濯ネットへ入れます。
洗濯機を使用する場合は、洗濯表示に対応した弱い水流のコースを選びましょう。
手洗いでは、洗浄液の中でやさしく押し洗いします。
揉む、擦る、ブラシをかける、強く振り洗いするといった方法は避けてください。
適切な洗剤と水温を選ぶ
ウールやカシミヤには、毛や絹に使用できる中性のおしゃれ着用洗剤を選びましょう。
洗剤は多く入れても汚れ落ちが比例して高まるわけではありません。
すすぎにくくなる可能性があるため、指定された使用量を守ることが大切です。
水温については、洗濯表示に記載された上限温度を超えないようにします。
ウールの場合は、極端に熱いお湯を避け、摩擦を与えないことが重要です。
ねじって絞らない
濡れたセーターをねじって絞ると、編み目や縫い目に負担がかかります。
縮みの直接的な原因になるとは限りませんが、伸びや型崩れを招く可能性があります。
手洗い後は、セーターを軽く押して水分を切るか、乾いたタオルに挟んでやさしく水分を吸収させましょう。
洗濯機で脱水する場合は、洗濯表示や洗剤、洗濯機の案内に従い、必要以上に長く脱水しないようにします。
形を整えて表示どおりに干す
洗濯後は放置せず、できるだけ早く形を整えます。
肩幅、身幅、着丈、袖丈、襟の形をやさしく整えてから干しましょう。
平干し表示がある場合は、平干しネットや乾いたバスタオルの上で乾燥させます。
つり干しが認められている場合は、衣類に負担がかからない方法で干しましょう。
直射日光は縮みの主原因ではありませんが、色あせや黄変、繊維の劣化を招くことがあります。
日陰干しの表示がある場合は、風通しのよい日陰で乾かしてください。
縮んだセーターは元に戻せるのか
軽い型崩れなら改善する可能性がある
編み目が一時的に詰まっただけの場合や、干し方によって形が乱れた場合は、水分を含ませて形を整えることで改善する可能性があります。
ただし、無理に引っ張ると一部だけが伸びたり、縫い目が破れたりすることがあります。
元の寸法を確認しながら、少しずつ形を整えることが大切です。
フェルト収縮は完全に戻すのが難しい
生地が厚く硬くなり、編み目が見えにくくなっている場合は、フェルト収縮が進んでいる可能性があります。
フェルト収縮では、ウールの繊維同士が複雑に絡み合っています。
絡み合った繊維を完全に元の状態へ戻すのは困難です。
柔軟剤やヘアトリートメントを使って伸ばす方法が紹介されることもありますが、必ず元に戻る方法ではありません。
色落ちや風合いの変化を招く可能性もあるため、高価なセーターや大切な衣類は専門店へ相談しましょう。
まとめ
セーターが縮む原因は、素材によって異なります。
ウールやカシミヤは、水分を含んだ状態で摩擦を受けると繊維が絡み、フェルト収縮を起こします。
綿ニットでは、製造時に加わった張力が洗濯によって緩み、編み目が詰まる緩和収縮が主な原因です。
合成繊維も、高温の乾燥機やアイロンによって変形する可能性があります。
縮みを防ぐためには、洗濯表示を確認し、素材に適した洗剤と水温を選ぶことが重要です。
摩擦を抑えてやさしく洗い、ねじって絞らず、洗濯表示に従って形を整えて干しましょう。
以上、セーターはなぜ縮んでしまうのかについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

