セーター編みにおける「ゲージ」とは、編み地の密度を示す数値です。
一般的な日本の編み図では、10cm四方の編み地に含まれる横方向の目数と、縦方向の段数で表します。
たとえば、編み図に「メリヤス編み10cm四方=22目・30段」と記載されている場合、幅10cmに22目、高さ10cmに30段入る編み地を作るという意味です。
ゲージは、完成するセーターのサイズやシルエット、着心地を左右する重要な基準です。
同じ毛糸と編み針を使っても、編む人の手加減によって目の大きさが変わるため、本番を編み始める前に確認する必要があります。
ゲージの基本的な見方
横方向の「目数」
横方向の目数は、主にセーターの身幅や胸囲、袖幅に影響します。
「10cmで20目」というゲージの場合、幅10cmを編むために20目が必要です。
たとえば、幅50cmの身頃を編む場合は、次のように計算します。
20目÷10cm×50cm=100目
ただし、実際の作り目を決める際は、模様の繰り返し、端目、とじ代、前立てなどを考慮する必要があります。
計算で100目になったとしても、編み図の構造によっては、そのまま100目を作り目にするとは限りません。
縦方向の「段数」
縦方向の段数は、主にセーターの着丈や袖丈、袖ぐりの深さなどに影響します。
「10cmで28段」というゲージの場合、高さ10cmを編むために28段が必要です。
着丈60cmに相当する段数を単純計算すると、次のようになります。
28段÷10cm×60cm=168段
ただし、実際のセーターには襟ぐりや袖ぐり、肩、裾などがあるため、すべての部分を168段編めばよいわけではありません。
増減目や模様の配置については、編み図の指示に従います。
セーター編みでゲージが重要な理由
完成サイズが大きく変わるため
ゲージが合っていないまま編み図どおりの目数と段数で編むと、完成サイズが予定より大きくなったり、小さくなったりします。
指定ゲージが10cmで20目なのに、自分のゲージが10cmで18目だった場合、一目が指定より大きい状態です。
そのまま同じ目数を編むと、セーターは予定より横に大きく仕上がります。
反対に、自分のゲージが10cmで22目だった場合は、一目が指定より小さい状態です。
そのまま編むと、セーターは予定より細く仕上がります。
数目程度の違いでも、身頃全体では数cm以上の差になる可能性があります。
シルエットや着心地が変わるため
ゲージは、セーターの大きさだけでなく、編み地の厚みややわらかさ、伸縮性、落ち感にも影響します。
編み目が詰まりすぎると、編み地が硬くなり、動きにくいセーターになることがあります。
反対に、編み目がゆるすぎると、透けやすくなったり、型崩れしやすくなったりする可能性があります。
指定ゲージに近づけることは、編み図の制作者が想定したシルエットや風合いを再現するためにも重要です。
毛糸の使用量が変わる可能性があるため
ゲージが変わると、完成サイズや編み地の密度も変わるため、毛糸の使用量が予定から増減する可能性があります。
編み地が予定より大きくなれば、その分だけ多くの毛糸が必要になることがあります。
また、模様編みや編み込み、縄編みなどは、一般的なメリヤス編みより毛糸を多く使う傾向があります。
途中で同じ毛糸を買い足しても、製造ロットの違いによって微妙な色差が生じる場合があります。
毛糸は、必要量より少し余裕を持って準備しておくと安心です。
ゲージが人によって異なる理由
編む力加減が違う
毛糸を強く引き締めながら編む人は、一目が小さくなりやすく、10cmの中に入る目数が多くなる傾向があります。
この状態は、一般的に「手がきつい」と表現されます。
反対に、毛糸をゆるく扱う人は一目が大きくなり、10cmに入る目数が少なくなりやすいでしょう。
この状態は「手がゆるい」と表現されます。
自分の手加減を無理に変えようとするよりも、編み針の太さを変えて調整する方法が一般的です。
編み針の持ち方や糸の送り方が違う
編み針の持ち方や角度、指にかける糸の強さによってもゲージは変わります。
棒針編みには、左手で糸をかけるフランス式や、右手で糸をかけるアメリカ式などがあります。
糸の持ち方を変えると手加減も変わるため、同じ人でも異なるゲージになることがあります。
毛糸の素材や構造が違う
同じ太さに分類される毛糸でも、素材や撚り方、弾力、毛羽立ちによって編み上がりは異なります。
ウール、アルパカ、コットン、リネン、アクリルなどは、それぞれ伸縮性や重さ、落ち感が異なります。
毛糸のラベルに同じ標準ゲージが記載されていても、完成した編み地の風合いまで同じになるとは限りません。
編み針の太さや素材が違う
一般的に太い編み針を使うと一目が大きくなり、10cmに入る目数は少なくなります。
細い編み針を使うと一目が小さくなり、10cmに入る目数は多くなります。
また、竹製、木製、金属製など、編み針の素材によって糸の滑り方が異なります。
針の素材はゲージに影響する場合がありますが、段数だけを調整する確実な方法ではありません。
編むときの姿勢や状態が違う
疲れているときや緊張しているときは、普段よりも手がきつくなることがあります。
長時間編むうちに力が抜け、編み始めより目がゆるくなることもあります。
ゲージ用の試し編みは、本番と同じ姿勢やペースで編むことが大切です。
ゲージスワッチとは
本番前に作る試し編み
ゲージスワッチとは、セーターを編み始める前に作る試し編みのことです。
「ゲージ見本」や、単に「スワッチ」と呼ばれることもあります。
本番で使用する毛糸と編み針を使い、編み図で指定された編み方で作ります。
スワッチを作ることで、自分のゲージだけでなく、編み地の厚みややわらかさ、伸縮性、肌触りなども確認できます。
10cmより大きく編む
ゲージが10cm四方で指定されていても、スワッチを10cmぴったりに作るのはおすすめできません。
編み地の端は中央部分よりも目が乱れたり、縮んだりしやすいためです。
中央部分で10cmを測れるように、ひと回り大きく編みましょう。
一般的には15cm四方程度が目安ですが、毛糸の太さや模様によっては、さらに大きく編むと測りやすくなります。
指定された編み方で作る
メリヤス編みのゲージが指定されている場合は、メリヤス編みでスワッチを作ります。
縄編み、透かし編み、編み込み模様などが指定されている場合は、その模様で確認します。
同じ毛糸と針を使っても、編み方によって目数と段数は変わります。
ゴム編み部分のゲージとメリヤス編み部分のゲージが別々に指定されていることもあるため、編み図をよく確認しましょう。
輪編みのセーターは輪編みでゲージを確認する
往復編みと輪編みではゲージが変わることがある
輪針で身頃や袖を輪に編むセーターの場合は、可能であれば輪編みの状態でゲージを確認します。
往復編みのメリヤス編みでは、表編みと裏編みを交互に行います。
一方、輪編みのメリヤス編みでは、基本的に表編みだけで編み進めます。
表編みと裏編みの力加減が異なる人は、往復編みと輪編みでゲージが変わる可能性があります。
疑似的な輪編みスワッチを作る方法もある
実際に筒状のスワッチを編むほか、裏側で糸を長く渡し、毎段表側から編む方法もあります。
この方法なら、平らな編み地のように見えても、輪編みと同様に表編みだけでゲージを確認できます。
ただし、裏側に渡す糸が編み地を引っ張らないように、十分なゆとりを持たせる必要があります。
小さな筒をマジックループなどで編む場合は、本番の身頃を編むときと手加減が変わる可能性にも注意しましょう。
ゲージの正しい測り方
本番と同じ毛糸と編み針でスワッチを編む
まずは、本番で使用する予定の毛糸と編み針を用意します。
編み図に指定された編み方で、中央の10cmを測れる大きさのスワッチを作ります。
毛糸を代用する場合も、実際にセーターへ使用する毛糸で確認することが重要です。
指定糸で作ったスワッチの数値を、別の毛糸にそのまま当てはめることはできません。
編み図や洗濯表示に合わせて仕上げる
スワッチを編み終えたら、毛糸の洗濯表示と編み図の指示を確認します。
完成したセーターに水通しや洗濯をする予定なら、スワッチにも同じ処理を行います。
スチームで仕上げるように指定されている場合は、素材に適した方法でスチームを当てます。
毛糸によっては、水分や熱によって編み地が伸びたり、縮んだりすることがあります。
特にアクリルなどの化学繊維は熱に弱い場合があるため、高温のアイロンを直接当てないようにしましょう。
平らな状態で完全に乾かす
水通しや洗濯をしたスワッチは、形を整えて平らな場所で乾かします。
乾燥中に必要以上に引っ張り、指定サイズへ無理に合わせるのは避けましょう。
透かし編みなど、ブロッキングで編み地を広げることを前提としている場合は、編み図の指示に従います。
スワッチが完全に乾いてから測定してください。
湿った状態では、正確なゲージを測れないことがあります。
中央部分の目数と段数を数える
スワッチを自然な状態で平らな場所に置きます。
定規やゲージメジャーを中央部分に当て、横10cmに含まれる目数を数えます。
続いて、縦10cmに含まれる段数を数えます。
編み地を引っ張ったり、定規で強く押さえたりしないようにしましょう。
端の目は形が乱れやすいため、測定範囲に含めません。
複数の場所を測って平均を確認する
測る位置によって数値が少し変わることがあります。
中央付近で場所をずらしながら2〜3回測り、その平均を確認すると、より正確なゲージを求められます。
目の途中までが10cmに含まれる場合は、21.5目のように小数で記録しても構いません。
数えにくい場合は20cmなどの広い範囲を測り、その数値を2で割って10cm当たりに換算する方法もあります。
たとえば、20cmに43目入っていれば、10cm当たり21.5目となります。
参考サイト
ゲージについて 棒針編み 基本のき 編み物 | 手づくりタウン|日本ヴォーグ社
ゲージが合わない場合の調整方法
指定より目数が多い場合
指定ゲージよりも10cmに入る目数が多い場合は、一目が小さく、編み地がきつい状態です。
このまま編み図どおりの目数で編むと、セーターが予定より小さく仕上がります。
基本的には、現在よりも太い編み針へ替えて、再びスワッチを作ります。
一度に大幅に太くするのではなく、まずは1号程度ずつ変更すると調整しやすいでしょう。
指定より目数が少ない場合
指定ゲージよりも10cmに入る目数が少ない場合は、一目が大きく、編み地がゆるい状態です。
このまま編むと、セーターが予定より大きく仕上がります。
基本的には、現在よりも細い編み針へ替えて調整します。
編み図に記載された針の号数は、指定ゲージを出すための目安です。
指定と異なる号数の針でも、適切なゲージと編み地になれば使用できます。
目数は合うが段数が合わない場合
横方向の目数は合っていても、縦方向の段数だけが合わないことがあります。
まずは、スワッチを指定どおりに仕上げ、複数の場所を測って数値を確認しましょう。
編み図に「○cmになるまで編む」と書かれている部分は、段数ではなく実際の長さを優先して調整できます。
一方、ラグラン線、袖山、襟ぐり、肩の引き返し編みなど、一定の段数で形を作る部分では、段数ゲージも重要です。
必要に応じて、増減目を行う間隔や段数を再計算します。
針の太さを変えると目数ゲージや編み地の風合いまで変わるため、目数が合っている場合は慎重に判断しましょう。
ゲージの違いで完成サイズはどれほど変わるのか
指定ゲージが20目の場合
指定ゲージが「10cmで20目」のセーターを、100目で編む場合を考えてみましょう。
指定どおりのゲージなら、編み地の幅は次のようになります。
100目÷20目×10cm=50cm
一方、自分のゲージが「10cmで18目」だった場合は、次の幅になります。
100目÷18目×10cm=約55.6cm
指定より約5.6cm広くなります。
前身頃と後ろ身頃をそれぞれ同じ目数で編む場合、胸まわりでは単純計算で約11cmの差が生じる可能性があります。
反対に、自分のゲージが「10cmで22目」だった場合は、次のようになります。
100目÷22目×10cm=約45.5cm
指定より約4.5cm細くなり、前後を合わせると約9cm小さくなる可能性があります。
実際の完成寸法は端目、とじ代、増減目、仕上げ方法などにも左右されますが、わずか2目の違いでも大きなサイズ差につながることが分かります。
ゲージから必要な目数と段数を計算する方法
必要な目数の計算式
作りたい幅に必要な目数は、次の式で求められます。
必要な目数=作りたい幅÷10cm×10cm当たりの目数
たとえば、10cmで18目のゲージで幅52cmを編む場合は、次のように計算します。
52cm÷10cm×18目=93.6目
編み目には小数がないため、実際には整数に調整します。
ただし、単純に94目へ四捨五入すればよいとは限りません。
模様の繰り返し数や端目、とじ代、左右の対称性などを考慮し、編み図に適した目数へ調整します。
必要な段数の計算式
作りたい長さに必要な段数は、次の式で求められます。
必要な段数=作りたい長さ÷10cm×10cm当たりの段数
たとえば、10cmで26段のゲージで、40cmの長さを編む場合は次のようになります。
40cm÷10cm×26段=104段
模様編みの場合は、模様が途中で終わらないように、繰り返しの段数に合わせて調整します。
指定と異なる毛糸を使う場合の注意点
毛糸の太さだけで判断しない
指定糸の代わりに別の毛糸を使う場合は、「並太」や「極太」といった太さの分類だけで判断しないようにしましょう。
同じ太さに分類されていても、素材や撚り方によってゲージは異なります。
毛糸のラベルに記載された標準ゲージを確認し、編み図の指定ゲージに近い毛糸を選びます。
ただし、ラベルの標準ゲージも目安であり、実際にはスワッチを編んで確認する必要があります。
編み地の風合いも確認する
ゲージの数値が一致していても、編み地の風合いまで同じになるとは限りません。
指定より細い毛糸を太い針で編めば、数字だけは合っても、薄くて透けやすい編み地になる可能性があります。
反対に、太い毛糸を細い針で編むと、硬くて重い編み地になる場合があります。
スワッチを触ったり、垂らしたり、軽く伸ばしたりして、セーターに適した編み地になっているか確認しましょう。
重量ではなく糸長も比較する
代替糸を準備するときは、1玉当たりの重量だけでなく、糸の長さも確認します。
同じ50gの毛糸でも、素材や太さによって糸長は異なります。
指定糸の必要玉数だけでなく、合計で何m必要なのかを確認すると、代替糸の必要量を判断しやすくなります。
ゲージを測るときによくある失敗
スワッチを小さく作りすぎる
10cmのゲージを測るために、10cmぴったりのスワッチしか作らないと、端の乱れた目まで測定範囲に入ってしまいます。
中央の安定した編み地を測れるように、指定範囲より大きなスワッチを作りましょう。
仕上げる前に測る
編み上がった直後のスワッチは、編み針や手の力による影響が残っています。
そのまま測ると、水通しや洗濯後のゲージと異なる場合があります。
完成後に行う予定の仕上げをスワッチにも施し、完全に乾いてから測りましょう。
編み地を引っ張って測る
編み地を引き伸ばした状態で測ると、実際より目数が少なくなります。
反対に、編み地が縮んだ状態では、実際より目数が多くなります。
平らな場所に自然な状態で置き、無理な力を加えずに測ることが大切です。
指定された針の号数だけを優先する
編み図に指定された号数の針を使っても、すべての人が同じゲージになるわけではありません。
重要なのは、針の号数を合わせることではなく、指定されたゲージと適切な編み地を作ることです。
指定が8号針でも、7号針や9号針で適切なゲージになるなら、その針を選びます。
編みかけを針の近くで測る
編み針に近い部分は、目が引っ張られたり縮んだりしているため、正確に測れないことがあります。
編みかけの作品を測る場合は、針から離れた中央部分を確認します。
輪針のコードに目が密集している場合は、長いコードへ移すか、別糸に目を休ませて編み地を自然に広げましょう。
ただし、編みかけでの測定は途中確認として利用し、最終的なゲージは指定どおりに仕上げたスワッチで判断します。
セーターを編んでいる途中でもゲージを確認する
本番前のスワッチでゲージが合っていても、実際のセーターを編み進めるうちに手加減が変わることがあります。
小さなスワッチでは緊張して手がきつくなり、広い身頃では力が抜けて目がゆるくなることもあります。
反対に、複雑な模様へ集中することで、目がきつくなる場合もあります。
身頃を数cm編んだ段階で、編み地の幅とゲージを再確認しましょう。
早い段階で違いに気づけば、ほどいて編み直す範囲を最小限に抑えられます。
セーター編みでは目数ゲージを特に重視する
目数ゲージは、身幅、胸囲、袖幅など、セーターの横方向のサイズへ直接影響します。
そのため、目数ゲージが合わないまま編み進めると、着用できないほど大きさが変わる可能性があります。
段数ゲージは、着丈や袖丈を「○cmになるまで編む」という方法で調整できる場合があります。
ただし、ラグラン線、袖山、襟ぐり、肩の引き返し編みなど、段数単位で形を作る部分では段数ゲージも重要です。
目数だけを確認して終わらせず、段数についても編み図の構造に応じて確認しましょう。
セーター編みのゲージに関するまとめ
セーター編みにおけるゲージとは、編み地の密度を示す数値です。
一般的には、10cm四方に含まれる目数と段数で表します。
目数ゲージは主にセーターの横幅に影響し、段数ゲージは縦の長さに影響します。
指定ゲージより目数が多い場合は太い針へ、目数が少ない場合は細い針へ替えるのが基本的な調整方法です。
ただし、数値だけでなく、編み地のやわらかさや厚み、伸縮性、落ち感も確認する必要があります。
本番前には、実際に使用する毛糸と編み針で大きめのスワッチを作りましょう。
毛糸の洗濯表示と編み図の指示に従って仕上げ、完全に乾かしてから中央部分を測定します。
ゲージ確認は手間のかかる作業ですが、完成したセーターのサイズ違いや着心地の失敗を防ぐために欠かせない工程です。
以上、セーター編みにおけるゲージについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

